愛知県美術館で展示:タピスリー「千と千尋の神隠し」を観てきました。

愛知県美術館で展示中フランス・オービュッソンの「千と千尋の神隠し」ブログタイトル 美術展やアート本のこと

スタジオジブリの名作がタピスリー(タペストリー)作品となって展示されている。

2025年4月11日から6月8日までと7月4日から8月17日までの期間、愛知県美術館で展示されている「千と千尋の神隠し」のタピスリー(タペストリー、織物ですね)、まるで精密機械で制作されたかのような細やかさと映画場面の再現性に驚くばかりでした。

このタピスリーを作っているのはフランス・オービュッソンという街。パリから車で4時間半。ちょうどフランスの真ん中くらいの位置にあって、15世紀ごろからタピスリーが織られきました。

2009年には、タピスリーやその伝統的な技術がユネスコの無形文化遺産に登録されていて、2019年からスタジオジブリの映画の中から選んだ場面を、大きなタピスリーとして織り上げるプロジェクトが進行しています。

愛知県美術館に展示されている作品は、こちら映画「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督)の一場面より《カオナシと対面する千尋》

© 2001 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli, NDDTM 製織:Manufacture Robert Four(オービュッソン、2023年) © 2023 Cité internationale de la tapisserie コレクション「カオナシの宴」《Le Banquet du Sans visage》 タピスリー(映画『千と千尋の神隠し』の一場面より)

まるでえ絵画ようだと思いません?グラデーションとか。これが織物だって信じられません。ぼーっと眺めてました。

タピスリー制作の流れ

愛知県美術館で展示されているタピスリーは、現地での機織りの開始が2022年1月で出来上がりが2023年1月20日ということで1年掛かりでの制作、もちろんこれは実際の機織の期間であって、下絵や糸を染めたりする作業を入れるともっと長い期間がかけられていることになります。

その下絵は、専門の職人によって描かれます。ただ描くだけでなく、織り方の指定や色の指定までを含めた設計図のようなもの。織りあがりとは左右反転しています。次に下絵に合わせて羊毛の染色で、青、赤、黄の3色のみでいろんな色を作り出していく職人は「カラリスト」と呼ばれています。敏腕印刷屋さんみたいです。特色(印刷用語)なんてあるんでしょうか?

そして染色された色の検討をするときに糸の束をつないだシャブレというものを用意して、作品とあっているかを見ます。

タピスリー《カオナシと対面する千尋》のための糸見本(249色)

そしていよいよ織り始めるわけですが、ここでもさまざまな素材を使ったり織り方を工夫したりと試行錯誤を重ねることによって徐々に目指す作品へと近づけていきます。大変な労力と時間をかけて制作されるものなんですね~。

タピスリー《カオナシと対面する千尋》のための試し織り

フランス・オービュッソンでは、「千と千尋の神隠し」のほか「もののけ姫」《呪いの傷を癒すアシタカ》、「ハウルの動く城」《ハウルの動く城(夕暮れの動く城)》、《ハウルの恐れ》がすでに制作され、「となりのトトロ」《メイとトトロのお昼寝》(2026年完成予定)、「風の谷のナウシカ」《”腐海”の秘密》(制作未定)となっています。

ちなみに日本人の織物職人も現地で活躍されています。

今回は、愛知万博20周年記念事業の特別展示としてフランス・オービュッソンのタピスリー:「千と千尋の神隠し」が愛知県美術館で開催され、大阪・関西万博のフランスパビリオンでは「もののけ姫」のタピスリーが公開されています。

2つの最先端デジタルとアナログ

最近では、よく10年後に亡くなる仕事なんて話もよく聞き、AI使って絵を描いたり、コード書いたり、文章書いたりもう何でもデジタルでできてしまう世の中になってきました。

もちろんそれは大切なことです。テクノロジーの進化によって私たちは生活面でも楽になったりするわけですし、デジタル最先端産業は、国の発展にも寄与しているのは当然のこと。

反対に、このタピスリーのような手仕事、伝統的な産業は、歴史あるアナログ最先端産業。

デジタルとアナログ。2種類の最先端技術の産業が、調和を保ってこれからも文化を育み、体験する人を驚かせ、感動させてほしいなと強く感じました。

最後に昔ラジオの仕事をしていた時、仲間から聴いた言葉で終わろうと思います。その仲間がギタリストのCharさんと仕事をしたときに聴いた言葉です。

Charさんいわく ”デジタルって究極のアナログを目指していると思う”

妙に納得してしまったラジオマンだったあの頃でした。

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